採用する側(企業)の立場に立って、転職市場を考えてみると
「転職」という言葉は、個人側の立場に立った言葉ですが、少し視点を変えて採用する企業側から
中途採用市場というものを考えてみたいと思います。
中途採用では、第2新卒採用を除けば「即戦力」を求められることが非常に多いです。
経理の求人であれば事業会社の経理または税理士事務所での巡回監査の経験者。
法人営業の求人であれば、法人営業の経験者(できれば同業界もしくは近しい業界)。
機械設計の求人であれば、機械設計の経験者。
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という具合に、9割ほどの求人は同職種経験者を求めています。
企業側としては、1日でも早く戦力になってもらうためにコストをかけて中途採用を行うので、当然といえば当然ですね。もっと裏側を言ってしまえば、人材紹介(我々のような転職エージェント)を通して採用する際は、通常の採用活動(求人広告や自社採用サイト、リファラル採用、ハローワークなど)よりも1人当たりの採用コストは高くなるため、即戦力度合が高い人材を求めるのです。
一方で、転職する側の個人の方からよく要望いただくのが、
「未経験だけれど人事に挑戦したい。」
「今までは営業として経験を積んできたけれど、販促企画やマーケティングなどの企画寄りの仕事をしてみたい。」
「SEをやってきたけれど、転職先では事務を希望している。」
というような、「やってみたい」という声です。
このように、実際には企業側のニーズと個人側のニーズが相反してしまうことが多くあります。
中途採用において、未経験の職種にチャレンジをするということは、ほとんどの場合「何か」を
捨てなければなりません。その「何か」とは、多くの場合待遇(収入)です。
採用する企業側からすると、職種未経験の人材は入社後に教育し、一人前になるまでに時間がかかるため、その分待遇は必然的に抑えられます。採用する側の立場に立って考えると、自然なことと言えるでしょう。
これまでのキャリアとは直接的には繋がらない、他職種にキャリアチェンジをする場合は、
待遇やポジションなど、様々な条件に目をつぶってでも挑戦したいのか、ということを自問自答する必要があります。
ちなみに、個人側から多く希望される職種は人気が高く、またポジションの枠が少ない傾向にあるのも事実です。
前述した人事については、中小企業だとそもそも人事のポジションを設けておらず、経営幹部や総務が兼務している場合がありますし、大手企業であっても管理部門(人事、総務、経理など)の部署は少ない人員しか配置しないことが多いです。必然的に採用の枠は少なくなります。
販促企画・マーケティングについては、このポジションに就くにはまず会社のビジネスのこと、自社商品のことをしっかりと理解し、専門的な知識(Webや広告など)を持っている人材が配置される傾向にあるため、未経験の中途採用をしている会社は非常に少ないです。
また事務(営業事務や一般事務など)に関しては、女性を中心に(今は男性も増えてきていますが)非常に人気の高い職種です。株式会社リクルートキャリアが独自で調査している直近(2018年1月)の転職求人倍率は、全国で1.82倍と非常に高い数字が出ていますが、職種別で「オフィスワーク事務」の求人倍率をみると0.42倍。1人の求職希望者に対し、0.42件の求人件数しかないことになります。
転職の「軸」を持つことが大切とお伝えしていますが、その軸が採用側のニーズに沿っているのか、収入なども含め、現実的に可能なことなのかについても考える必要がありまね。